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トップインタビュー 鉄鋼新戦略を聞く

――前期(06年3月期)決算では連結経常利益が23億円に達し、過去最高となった。
「私の密かな目標は25億円だったが、期末近くになって特殊鋼の在庫調整の影響が出てきた。お客さんが材料入手難の時代に発注を増やしたが、そこまでは実需が増えなかったということでしょう。これが今期まで尾を引いている」

――今期をどう見ていますか?
「在庫調整は終わりに近づいているので、受注量は戻ってくるのではないか。一方ではニッケルなどの原料価格が上昇している。特殊合金の分野ではコストが大きく跳ね上がる。販売価格への転嫁をお願いすることになりますが、交渉に時間がかかって、原料高の後追いになる恐れがある。原油価格の上昇が自動車需要にどういう影響を与えるか、も気になる。そういった不安定な経営環境の中でも予想数字(連結経常利益25億円)は確保したいと思っている」
「工具鋼では太径丸鋼(精密鍛造材)がどうなるか。需給ひっ迫時に撤退するメーカーが相次いだが、ここへきて生産を復活させたメーカーがあると聞いている。加えて輸入材が入ってくるようなことになったら影響が出るだろう。一方では、昨年末に立ち上がった1千㌧プレスが戦力化しているので、これはプラスになる。カムス(直系の工具鋼加工・販売会社)は期待通りの成果を上げている。今期は本体との連携を深めて、技術、営業両面から体質強化を進めたいと思っている」

――4月に発表した中期経営計画(06年~08年度)について改めてお聞きしたい。これからの3年間、何をして、どんな会社にしたいと。
「05年度の連結ROS(売上高経常利益率)は5.6%だったが、08年度には8%に引き上げたい。体質を強化しておかないと追風が止まった時に倒れてしまうので『損益分岐点比率75%(05年度は84%)』も目標に置いた。当社は苦しい時代が長かったので、設備が古いし社員もおとなしい人が多い。希望をもって前進していく元気な会社にしようという思いを込めて、キャッチフレーズはCAP(創造・活力・迅速)にした。中期計画の最重点は“人づくり”です。生産面では1年前から採り入れているトヨタ生産システムを定着させる。これをベースにして、当社に合った形に変えていきます」

――特殊鋼事業ではどんな手を打っていくことになるのですか?
「工具鋼については『特徴ある商品』で存在価値を示していくことになる。被削性に優れた冷間ダイス鋼「KD11S」は当社の看板商品ですが、変形歪みをミニマムにして欲しいというニーズが強いので、それに応えた新鋼種の供給を始めています。自動車用ハイテン(高張力)鋼板をプレスする金型材料についても神戸製鋼と共同で開発に取り組んでいる」
「設備面では2500㌧プレスのリプレースとして3千㌧プレスを導入したのに続いて、昨年末には600㌧プレスを1千㌧プレスに換えた。残る1500㌧プレスが更新時期にきているので、そのリプレース投資を計画している。2千㌧にするか、3千㌧にするかは需要動向を見たうえで決めたい」

――先ほど話の出た「カムス」の強化についてはどんな考えを?
「当社には工具鋼の営業部門があり、カムスにも営業部隊がいる。高級工具鋼を販売するには技術的な知識が必要ですから、別々のままでいいのかどうか、その検討をしている。九州での自動車生産拡大に対応した西日本での工具鋼流通拠点新設も検討課題です。そういうものも含め、工具鋼トータルで18億円(3年間)の設備投資を計画している」

――特殊合金についてはどんな戦略を立てたのですか?
「耐食軸受用素材、パソコンHDD用素材、ピストンリング用素材、耐熱ボルト用素材、平面ディスプレイ関連素材など7アイテムに重点を置いて拡販を進める。設備投資は真空溶解炉の能力増強などで6億円です」

――神戸製鋼から生産受託している軸受鋼二次加工は?
「神戸製鋼は中国市場を狙った軸受鋼の拡販に取り組んでいる。当社は細径の軸受鋼鋼線の生産を受け持つことになるので、そのコスト競争力強化が課題です」